官能小説~女子的夜話~

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【第15話】レモンサワー (前編)

2014.5.15

酒好きな上司と飲み歩き、3軒目にたどり着いたのは小さなおでん屋だった。

割烹着をきた40代くらいの女将さんが、泥酔した上司を見るなり「あら、片岡さんいらっしゃい。今日もご機嫌ね」と笑った。

カウンターの端っこでお爺さんが1人で熱燗を飲んでいる以外、お客は誰もいなかった。店内には静かに演歌が流れている。僕たちは濃いめの生レモンサワーで乾杯した。1杯目は生ビールでそれ以降は必ずレモンサワーを注文するのが定番だ。

「どうですか、滝沢君。ここは君にも内緒にしていたとっておきなんだ。あんな美人を眺めながら飲むレモンサワーはたまらんよねえ」

と、片岡さんが嬉しそうに耳打した。

確かに、この店の女将さんは目が合うとドギマギしてしまうくらいの美人だ。目尻に寄る皺にさえも色気がある。最近は片岡さんと女性の趣味が似てきたらしく、40〜50代くらいの色っぽい女性にグッとくるようになった。

0時を回る頃、トイレから戻ると片岡さんはカウンターに突っ伏して寝てしまっていた。

女将さんにお願いしてタクシーを1台手配してもらい、運転手に詳しい住所を伝えた。片岡さんは千鳥足で後部座席に乗り込むと、笑顔で手を振り帰っていった。

「ふふ、片岡さんっていつもニコニコしてて可愛いわね。そういえば、あなた一緒に乗らなくてよかったの? もう1台呼びましょうか?」

「あ、僕近くなんで、どこかで1杯ひっかけてから帰ろうかなと思って」

「あら、それならまだここで飲んでいったら?」

女将さんは誘うように笑った。

「私もちょうど飲みたいと思ってたの」

思いがけないお誘いに「ぜし!」と声がうわずってしまった。

女将さんは割烹着を脱ぐと、ニットに膝上スカートというシンプルな格好になった。

(うわ、なんか妙にエロいな…)

女将さんは冷酒を持ってきて僕の隣にいそいそと座った。はしゃぐ様子が可愛らしい。

「美味しい! この瞬間のために生きているようなものねえ」

女将さんは酔いが回ると饒舌になった。最初はお互いの仕事の愚痴などを言い合って笑っていたが、2合を飲み干す頃にはだいぶ呂律が怪しくなってきた。

僕がトイレに立っている間に、女将さんも肘をついてうとうとし始めていた。

「女将さん、大丈夫ですか? そろそろお会計お願いします」

「…やだ、私寝ちゃってた? 今何時?」

慌てて立ち上がろうとしてバランスを崩した。とっさに抱きとめると、ふわっといい匂いがした。

「あら、ごめんなさい…。ふふ、もう若くないわね」

しかし、女将さんは僕の胸元から離れようとしなかった。

そのまま身体を寄せて僕の肩に頭を乗せた。想像以上に胸が柔らかい。

(え、うそだろ、いいのこれ…?)

密着した身体から伝わる体温と不自然な沈黙に促され、恐る恐る腰に手を回すと、女将さんが静かに微笑むのがわかった。

「ごめんね、おばさんに甘えられても嬉しくないよね」

「い、いやっ、そんなこと…!」

「ありがとう。滝沢さん優しいのね」

女将さんは潤んだ目で僕を見上げ、柔らかな唇を重ねた。

最初は遠慮がちに唇をなぞっていたが、やがて温かな舌を優しく絡ませた。歯茎をなぞり唾液を貪りながら、僕の怒張した股間をスーツの上から弄った。

「うっ、女将さん、そこまでは…」

「滝沢さん、お願い、私もう我慢できないの」

そう言って、女将さんは僕のズボンのチャックをおろし、ボクサーパンツの切れ目の中に手を伸ばして男幹を直接しごいた。

さっきまでの気品のある女性からただのいやらしい女の顔になっていた。

それが僕をどうしようもなく興奮させた。

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藍川じゅん

元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中。




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