官能小説~女子的夜話~

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【第37話】「幼馴染」前編

2015.5.7

幼なじみの岩渕さんと、俺の家で勉強会をすることになった。

彼女は、うちの向かいのマンションに住む1つ年下の女の子で、小さいころは毎日お互いの家を行き来して遊んでいた。

小学校の高学年くらいからなんとなく疎遠になり、俺は近くの公立中学に、彼女は中高一貫の私立に入学したので、ますます会う機会が減った。

アニメや漫画では、幼なじみの女の子が毎朝起こしに来てくれたり何かと世話を焼いてくれるようだが、実際はこんなものだ。

今年の春、たまたま同じ予備校の授業で再会した。

高校3年生になった岩渕さんは、別人のように垢抜けていたが、昔と変わらず俺のことを「こうくん」と呼んでくれた。しょぼくれた浪人生が気安く「麻衣ちゃん」などと呼ぶのは申し訳ないような気がして、俺は意識的に苗字で呼んだ。

彼女は、予備校で俺を見かけるたびに理数系のわからない問題を質問してくるようになり、俺も英語の長文訳や小論文を彼女に直してもらう機会が増えた。

ある日、

「ねえ、これさ、どっちかの家で勉強会した方が早くない?」

と岩渕さんが言い出し、それから定期的に俺の家で勉強会が開かれるようになった。

俺はなるべく折り畳み式の一人用のテーブルに参考書やノートをひろげた。向き合って座ると、岩渕さんの胸元や匂いや細い指などが気になって集中できないからだ。

疲れて集中力が切れるころ、岩渕さんは部屋のクローゼットや机の引き出しを勝手に漁りだす。それが始まったら休憩の合図だ。

「やめろって。ほんとに何もないから」

「男の子の部屋には絶対エロ本が隠してあるって聞いたんだけどなあ」

おやつを食べながら、とりとめもなく話したり音楽をかけたりして過ごす。こんな時、岩渕さんが俺の彼女だったら、といつも思う。ベッドの上でくつろぐ彼女にキスをしたり、触れたりできるのに。

「こうくんって、いやらしいこと考えたりする?」

まさしく今いやらしい想像をしていたところにいきなり図星をつかれ、びっくりしてお茶を喉に詰まらせた。

「いや、そりゃまあ、するよ」

「そういう時って、あの」

いつもハキハキと話す岩渕さんが珍しく言い淀んだ。

「あ、あそこってほんとに大きくなるものなの?」

「え」

何を聞かれているのかわからず、キョトンとしまった。彼女は恥ずかしそうにしているものの、好奇心を抑えられないらしく、俺の答えを目を輝かせて待っていた。

「うん、なるけど…

「ほんとに想像だけで大きくなるんだ! すごいね。サイズって結構変わるものなの? 皮が剥けるとか剥けないとかってどういうこと? 夢精ってほんとにあるの?」

今時、中学生でも知ってそうなことだが、岩渕さんはずっと女子校にいたせいか、そのへんの知識が疎いのかもしれない。最終的には、ベッドから身を乗り出し、

「ねえ、こうくんのちょっとだけ見せてよ」

と、とんでもないことを言い出した。

「はあ!? 絶対やだよ!」

「だって友達の中で実際に男の人のアレ見たことないの私だけなんだもん」

「無理して見るもんじゃないだろ!」

「こんなことお願いできるのこうくんだけなの! お願い、一瞬でいいから!」

「いやだ!」「お願い!」を何往復しても、彼女はなお食い下がった。そういえば、岩渕さんは小さいころからかなり強引でわがままが通るまで泣き続けるような子だった。三つ子の魂百までというやつか。

「見せてあげてもいいけど、そっちだってなんか見せろよな」

「えっ、なんかって?」

「いや、その、パンツとか…」

自分で言っておいて、恥ずかしさのあまり目が泳いでしまった。しかし、岩渕さんの提案は俺の上をいっていた。

「じゃあ、私のオナニー見せるから、こうくんも自分でしてるとこ見せて? それでいいでしょ?」

岩渕さんがパッと笑顔になった。

俺は昔からこの笑顔に弱かったことを思い出した。

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藍川じゅん

元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中。




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