官能小説~女子的夜話~

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【第51話】「ゼロのキス」前編

2015.12.3

寝ている悠里ちゃんの頬にキスをしたことがある。柔らかくてサラサラでキメ細やかな白い肌。

私は、いつもそれに触れたくてウズウズしている。

悠里ちゃんは、教室ではいつも野暮ったいフレームの眼鏡をかけていて、伏し目がちに小声で話す。

急に話しかけられると真っ赤になってあわてふためく。どのクラスにもいる地味で目立たない女子だ。

でも、私は知っている。

悠里ちゃんは眼鏡を外して前髪を上げると目がぱっちりしてて可愛いし

おっぱいも腰のくびれもお尻の丸みもグラビアアイドルに負けないくらい美しいのだ。

悠里ちゃんとは、二年の終わりから少しずつ仲良くなり、いつのまにか毎日一緒に遊ぶようになった。

悠里ちゃんは映画に詳しく、一緒にレンタルビデオ屋に行くといろんな映画をおすすめしてくれる。

二人でDVDを観て感想を言い合ったり、原作の本や漫画を貸し借りするのも楽しかった。

最近は、うちでお泊まり会することも多い。

悠里ちゃんは、あまり自分のことを話したがらないが、どうやらなるべく家にいたくない事情があるようだった。

一緒に銭湯へ行った時や、なにげなく部屋着に着替える時、私は彼女の体に目が釘付けになる。

腰は引き締まっているのに胸とお尻が不釣り合いなほど大きく、色の薄い巨大な乳輪はひどく官能的に見えた。

同じ18歳とは思えない成熟した肉付きだ。

私はいつも自分の貧相な体と比べて冗談めかしたが、本当は息が詰まるほどドキドキしていた。

悠里ちゃんの体に触りたいと思う気持ちと、そんなわけないと否定する気持ちで、バラバラになりそうだった。

いつしか、私は悠里ちゃんが寝入った頃、そっと頬にキスするようになった。

寝顔を見てると愛おしくてたまらなくて、でもどうしたらいいのかわからなくて、

迷った末に少しだけ口づけた。一秒にも満たないものだったが、唇の先の温かな皮膚の感触が、私を異常に興奮させた。

これは友達の印だから、と自分に変な言い訳をして、たびたびキスするようになった。

しかし、今日のお泊まり会は様子が違った。悠里ちゃんが、

「一緒に寝てもいい?」

と言って、私の布団の中に入ってきたのだ。

「くっついて寝ると温かいね」

恥ずかしそうに笑う悠里ちゃんの顔がすぐ近くにある。

真っ暗な室内だと、彼女の白い肌が浮き上がって見える。

色違いのスウェットを履いた足がふくらはぎ辺りで重なって、右手の指先がちょうど悠里ちゃんの乳房に触れるか触れないかの位置にあった。

私は体が固まってしまって動けなかった。これ以上近くに来られたら、どうにかなってしまいそうだった。

「大丈夫? 汗かいてる。暑い?」

悠里ちゃんの手が私の頬に触れると、ビクッと体が震えた。

それを見て、悠里ちゃんが微笑む。

今日の悠里ちゃんは優しくて、大人っぽくて、なんだか色っぽかった。

汗ばんだ額に置かれた手が頬を撫で、輪郭をなぞり、やがて指先が私の唇にぷにっと触れる。

その瞬間、私の中の何かが弾け、反射的にキスしてしまった。

唇に唇を押し付けただけの簡単なものだったが、それは友達の印なんかではなかった。

私は自分にびっくりして何も言えなかった。悠里ちゃんもしばらく不思議そうに私を見つめていたが、やがて小さな声で

「やっと口にしてくれたね」

と呟き、自分から口づけた。生温かな舌を絡め合う大人のキスだった。

「はぁ…っ」

悠里ちゃんの唇から離れて、大きく息継ぎをする。

キスの間、緊張して息を止めたままだったのだ。

人間の舌があんなに柔らかくいやらしく動くものだなんて、知らなかった。

本当に、口からチュッて音がするのも驚きだった。

「今日は、ファーストキスの練習ね」

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藍川じゅん

元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中。




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