官能小説~女子的夜話~

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【第63話】「押入れ」

2016.6.16

兄が、押入れの奥にエロ本を隠していると知ったのは、私が中学2年生の時だ。

兄の部屋は、四畳半のフローリングだが、不釣り合いなほど大きな押し入れがついていて、その中に使ってないギターやら読んでない本や昔のアルバムなどが何年も誇りをかぶっている。

当時受験生だった私は、参考書を借りようと、押入れの下段の本棚を物色していた。

その奥に、不自然に新しい雑誌が数冊積まれているのを発見したのだ。

下着姿の可愛い女の子の周りに「中出し」「イキまくり」「淫乱」などの文字が踊っている。

14歳の私は、恥ずかしさや困惑よりも、まず恐怖を感じた。

本屋やコンビニでその本を手に取り、レジでお金を払い、押し入れの中に隠すという一連の行動と、明るくていつもふざけてばかりいる兄のイメージがまるで結びつかなかったからだ。

その頃から、少しずつ兄と距離を置くようになった。

それでも、好奇心に勝つことができず、兄の留守を狙って部屋に忍び込んでは、エロ本を貪り読むようになった。

読んでるうちに、股間と下腹部がなんだかムズムズすることに気がついた。

おしっこではない透明の液体でパンツがぐっしょり濡れていることもあったが、それがどういうことなのか、その時の私はまだわかっていなかった。

「OLの社内マジイキオナニーを覗き見!」という特集に、自分の股間に手や物を当てている女性たちの写真が載っていた。

トイレの中でパンティの上に指を置いたり、会議室の机の上で足をひろげ、バイブを入れたりしている。どの人も恍惚の表情を浮かべ、そしてモザイク加工された股間の周りが濡れていた。

ある日、私はそのページの真似をして、パンツの上から自分の股間を触ってみた。

濡れた下着を触るのは気持ち悪かったが、自然と中指が割れ目をなぞっていた。

今まで経験したことのない、むずがゆいようや切なさがこみ上げ、私は夢中で中指を動かした。

「ふ…っ、う、う…っ」

中指でパンツをこすりながら、足を大きくひろげ、左手を自分の胸に当てた。

雑誌のOLは、自分の乳首をつまんでいて、その写真の下に「コリコリに硬くなった乳首をつまむと感じちゃうの」と、キャプションがついていた。

私はTシャツをめくり、膨らみかけの胸をはだけさせて、自分の乳首に触れてみた。

くすぐったいだけだったが、触ってはいけない場所を触っているという背徳感で、異常にドキドキした。

「あ、は…ああっ」

中指をさらにゴシゴシ動かし、それに合わせて腰をくねらせると、不思議と声が漏れ始めた。

こんな女みたいな声を出せるのかと自分でも驚きだった。

「ああー…っ、気持ちいい…っ気持ちいいのお」

雑誌の女性たちの台詞を真似してみると、自分の声にさらに興奮して、もうこみ上がる感情を抑えることができなかった。

「あっ、あっ、やだ…やだ、もう…ああーっ…!」

硬く目を閉じ、お尻と両足に力を入れ、仰け反った。しかし、その時の私には、この感覚がなんなのかもわからなかった。

兄の部屋で声をあげてオナニーする習慣は、高校生になっても続いた。

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藍川じゅん

元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中。




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