官能小説~女子的夜話~

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【第64話】「押入れ」中編

2016.7.7

私が高校に入ると、兄は家に彼女を連れてくるようになった。

何人か違う女の子を見かけたので、どうやらそこそこモテるようだ。

私は無関心を装っていたが、あの部屋で兄がセックスしていると考えるだけで、

足の間の小さな芽が膨らむのがわかった。

その頃、私は男の体に興味津々だった。

エロ本だけでなく、家のパソコンでエロ動画も見ていたし、

風呂上がりの兄をチラチラと盗み見たりしていた。

兄は、小学校から高校まで野球で鍛えていて、たくましく引き締まった体をしている。

私も、いつかあんな体の男と裸で抱き合うのだろうかと妄想しては、毎日悶々としていた。

その日も、家族が誰もいない時間帯を狙い、兄の部屋に忍び込んだ。

押入れの下段に潜り、本棚の裏に手を伸ばす。

四つん這いのまま後ろ向きで戻ろうとした時、階段をあがる足音が聞こえた。

押入れの中にいたせいで、玄関のドアを開ける音に気がつかなかったのだ。

今慌てて飛び出したら、兄の部屋から出た瞬間を目撃されてしまう。

全身から嫌な汗がドッと吹き出した。

どうする? なんて言い訳する? と頭を巡らせていたが、

兄と女性のが聞こえた瞬間、目の前がまっくらになって体が動かなくなってしまった。

「こないだのあれ、どうだった?」

「あー、大変だったよ、あの後。竹内がさあ…」

兄と彼女は、部屋に入ってからも、くつろいだ様子で世間話を続けた。

私は、押入れの中で息を潜め、体を縮こまらせていた。

緊張のあまり、全身が冷たくなっている。

ステレオから音楽が流れ始めたが、取り留めのない会話は途切れることがなかった。

二人はだいぶ仲がいいようだ。

「早く帰って欲しい」

「部屋から出て行って欲しい」

という気持ちと、

「どうせやるなら早く始めて欲しい」

という両極端な気持ちがせめぎあっていた。

どのくらい時間が経ったのか、皆目わからなかった。

押入れの中は、数分が数時間に感じられた。

やがて、ベッドのスプリングがきしむ音と共に、不自然な沈黙が訪れた。

「あ…妹さんに聞こえちゃう…」

「音立てなければ大丈夫だよ」

やん…ダメだって」

兄を制する彼女の声に、緊張感はなかった。

共犯者たちがクスクス笑っている声が聞こえる。

「はぁ…っ、んんっ…」

やがて、ピチャ…ピチャ…という体液の音が聞こえ始めた。

「あ、やあっ…そんな音たてないで…」

「いつもよりすげー濡れてる。興奮しちゃった?」

「や…あん、恥ずかしい…」

「うちの妹、隣の部屋で聞き耳立ててるかもよ」

「ふふ、やだ…あんっ」

残念ながら、妹は隣の部屋ではなく同じ室内にいた。

私は、音を立てないように細心の注意を払いながら、そろそろと自分のスカートに手を伸ばした。

すぐ近くで、男のゴツゴツした手が、柔らかな肉を撫でている。

女の生々しい喘ぎ声が聞こえる。

私は、興奮でどうにかなってしまいそうだった。

「ああー、やばい…どんどんよくなっちゃう…」

「あーすげえ気持ちよさそう、もっと顔見せて」

「や、だめえ…そこ、弱いとこだから…っ」

「いいじゃん、いきなよ」

「あ、あ、だめ…、声、声…っ我慢できないから…っ」

「大丈夫、大きい声だしていいよ」

「だめ、ほんとだめ…! や、あっ、あっあっっ」

「深雪ちゃん、いって、我慢しないで」

「あーっ、んんっ…い、いっ、い…っっ!!」

声を押し殺したのか、手で口を押さえたのか、絶頂の瞬間の声は聞き取れなかった。

彼女の声に合わせて、パンツの上から肉襞の間を擦った。

愛液が溢れ、押入れの床に垂れてしまいそうだった。

「見つかったら取り返しのつかないことになる」とわかっているのに、

手を止めることができなかった。

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藍川じゅん

元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中。




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