官能小説~女子的夜話~

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【第67話】「金縛り」

2016.8.18

数ヶ月に一度くらい、金縛りに遭うことがある。

手足が動かなくなり、呼吸が苦しく、声も出せない。

助けを呼ぶこともできず、暗闇の中で静かにもがき苦しむしかない。

それを金縛りと呼ぶか睡眠麻痺と呼ぶかは、主観の問題だ。

私は、真夜中に体が動かなくなるたびに「これは麻痺してるだけ」と自分に

言い聞かせている。

その日も、唐突な身体の硬直で目を覚ました。

手足が重く、いうことをきかない。

息もできず、目も開けられず、自分の身体が別の人間のもののようで気持ち悪い。

指先に意識を集中させ、ゆっくり息を吐いた。

手から少しずつ動かしていけば、そのうち起き上がることができるはずだ。

しかし、この時、私は自分以外のの気配を感じていた。

首筋のすぐ近くに、誰かの手がある。

(首を絞められる!)

反射的にそう思い、私は恐怖で震えた。

金縛りの体験談では、人の気配と首絞めがセットになっているものが多い。

今までなんとなくやり過ごしてこれたというのに、とうとう来てしまった。

本物の金縛りが。

全身にびっしりと冷たい汗をかいて体を強張らせていると、

手の気配は私の首筋に触れるか触れないかの距離をサワサワと動き始めた。

いつ暴力的な力強さで首をギュッと絞められるのかと緊張していると、その手は鎖骨を撫で始めた。

(え?)

柔らかな動きは、そのままゆっくりと乳房へと降りてくる。

(え、うそ、まさか)

そして、男のゴツゴツした関節の太い指が、私の乳房に確かに触れた。

「ひゃ…んっ」

ここにいないはずの誰かの手が、乳房の先端を指の腹で優しく刺激する。

目も開けられず、手足の自由がきかない状態で、その手に乳房とその先端をまさぐられ続けた。

(いや…怖い…なんで)

私は、自分の部屋に、存在しないはずの誰かがいるという恐怖と、

優しい愛撫のアンバランスさに困惑していた。

しかし、その動きに、悪意は感じられない。

手は、ぷっくりと膨らんだ私の乳輪を、指先でゆっくりなぞった。

「ふ…あっ」

これは、きっと夢だ。

そう思い込むことで、自分を納得させた。手の温かさや肌の質感は、

リアルそのものだったが、それも私の脳が作り上げたものなのだろう。

陥没気味の乳頭が突出すると、親指と人さし指で両乳首を摘み、

更に上に引き上げるようにコスコスと優しくさすった。

(やん、どうしよう…気持ちなっちゃう…)

乳頭をキュッと強めにつねられると、腰がビクンと反応した。

「んっ…ふうっ」

(あっ、あ…んっ、それ好き…)

吐息しか出ていないのに、私の好きな場所を好きな攻め方で攻めてくれる。

乳首をコリコリ転がされながら、少し自由になった足をわずかに広げ、

腰をくねらせて手を誘導した。

(う…ん…ここも触ってぇ)

手は、 濡れた秘口の入口に触れ、私の蜜をすくい取った。

「ひ、あぁ…っ」

すでに恥ずかしいくらい溢れ出ていて、後ろの穴まで濡れている。

目を開けられない分、自分の性器からチャプチャプと響く音が、

余計にいやらしく感じられた。

(あっ、あっ、指、指入れてぇ…っ我慢できないのぉ)

手は、しばらく焦らすように蜜で肉襞をなぞってから、

ツプ…とゆっくりと指を挿入した。

「はあっ、ん…」

うねりを確かめるように膣壁を撫で回し、中指で、

恥骨の裏側のツブツブした場所を擦る。

(っあっ、ああっ、そこっ気持ちいいの…っ)

すっかり膨らんで熱をもったその箇所を、指の腹でグリグリと刺激されるたび、

腰が浮いた。手は休まることなく、私の好きな範囲だけをを的確に撫で回す。

(あっ、あっ、そこいいのっ、いっちゃうからっ、やめてっ)

頭の中で制してみても、本気汁がどんどん溢れ出てしまい、

その指の動きをさらに滑らかにしていた。

(ああっ、あっ…も、ダメ、いい…っ気持ちいい…っ)

「い…くっ…!」

お尻と内腿に力を込め、腰を思い切り浮かせて絶頂を迎えた瞬間、

耳元で誰かの吐息を聞いた気がした。

目が覚めると、朝になっていて、部屋は寝る前となんら変わらない様子だった。

いつもと違うのは、ショーツもパジャマもびっしょりと濡れ、

シーツが冷たくなっていることだけだった。

濡れそぼったシーツを替えながら、あの指の感触を思い出して頬を染める。

あんな金縛りなら、たまに遭ってもいいかも…。

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藍川じゅん

元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中。




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