唾液でべとべとになった亀頭を手でこねまわす。
舌を長く延ばして、男の顔を見ながら我慢汁を舌先でチロチロと舐め取る。男は眉間にしわを寄せ、切なげな声をあげた。
「あっ…そんな…」
竿に舌を這わせると、蒸れた男の臭いが鼻についた。大げさに鼻を鳴らして陰毛と陰茎の根元の臭いを嗅ぎながら、左手で自分の股間にそっと手を伸ばした。下着がぐっしょり濡れて愛液がしたたれ落ちそうだ。
(ああっ…この臭い、すごくいやらしい…)
肥大して敏感になったクリトリスを指先で刺激しながら、右手を根元に添えて亀頭を口ですっぽり咥えこんだ。口内で舌を絡ませながら少しずつ首を前後に動かす。男が「あーっ…」と小さく叫んだ。唾液を溜めてわざと音をたてる。じゅっ、じゅっという粘膜の卑猥な音が無人の非常階段に響いていた。男が苦しそうに喘ぐたびに、身体の芯がカッと熱くなり膣がヒクヒクして中からさらに液が溢れた。
(どうしよう、どんどん濡れてる…)
もっと喘ぎ声を聞きたくて、自然と動きが早くなる。男のペニスは破裂しそうなくらいパンパンに硬く膨れ上がっていた。男が息を荒くさせて何か言いたそうにしたので、眼だけで頷いた。
「も、ダメだ…出る…っ」
勢いよく精子が噴出し、竿がびくんびくんと何度も波打った。それらを全て受け止め、後から出る残りの精子も舐め取った。あまりにも量が多くて唇の端から少しこぼれ落ちたが、口内に溜まった唾液と精子を飲み干した。
「ハァッ…美味しい…」
視線がいつもよりだらしなくトロンとしてしまう。スカートの裾をたくしあげ、ぐっしょり濡れたパンツを脱いで片足にひっかけた。
壁に片手をつき、腰を突き出す。もう片方の手で自分の尻の肉をぐいと掴んだ。
「見て…こんなに濡れちゃった…」
こんなことして、まるで変態みたいだ。恥ずかしいのに気持ちよくてやめられない。
「私のも舐めて…」
一瞬の間があって、かすかな衣擦れの音がした。急に生温かい舌が充血した肉を刺激したので、思いがけず大きな声が出た。
「はああっ…」
男は大きな両手で尻の肉をわし掴みにし、びしょ濡れの秘部を舐め回した。
「あっ…あっ…」
舌の先端でひだをなぞったり、強く吸ったりされると、気持ちよくて腰をくねらせてしまう。
「ああっ…いい…そこ…きもちいいっ…」
耐え切れなくなって上半身を起こし、上体をひねって後ろを向いた。
「お願い…このまま挿れて…」
男の唇とその周りがいやらしく濡れていた。目が鈍く鋭く光っていて、息は荒く、眉間に深いしわが寄っていて、獣みたいでドキドキした。
駅で会った時とはまるで別人のようだった。
張り詰めた亀頭を濡れた肉襞に何度も擦りつけられ、じれったくて淫らに腰をくねらせた。
「あっ…ん、早く来て…」
「中、すっごいトロトロになってる…」
「あっ、んんっ…いいっ…そこ、気持ちいい…」
「ダメだ…我慢できない…」
と呟くと、男は腰を両手で抱え力強く一気に奥まで突き上げた。
「んっああっ」
「ああっ…いい…っいいっ……すごいっ…」
「ごめ…、も…すぐイキそう…」
「あっ…あっ…もうイク…イクっ…!」
「…出るっ」
「あああっ」
男は素早く膣からペニスを抜き、地面に向かって放出した。
足元に白濁液が飛び散る。2度目の射精とは思えない量だった。
2人の呼吸は荒く熱っぽかった。
背後の男は放心した様子で、愛液と精液でベトベトになったペニスをぶら下げている。薄汚れたコンクリートの壁にもたれながら、甘く疼く悦びの余韻に浸った。
なんでこんなに楽しいのだろう。
口に咥えるのも舐めてもらうのも挿入でさえも、今までは相手が望むから、喜ぶからしていただけなのに。
向き直って小さくキスをすると、男の方から舌を絡めてきた。自分の愛液の味がする。耳元で「すごく気持ちよかった…」と、うっとり呟いた。本心だった。
「俺も…ていうか、いや、こんなん初めてで…」
男が足首まで落ちていた下着とズボンを慌てて引き上げたので、思わずフフッと声を出して笑った。
「あっ可愛い」
と、急に顔を覗き込まれた。
「今日初めてちゃんと笑いましたね」
そういえば、そうかも。なんだか照れ臭くて、顔が赤いのがバレないように男の首筋に小さく口づける。
「ねえ、もう少しゆっくりできる場所にいきませんか?」
と、耳元で囁いた。
「…もっと欲しいの」
挑戦的な笑みを浮かべると、男もつられて「望むところです」と笑った。
雨雲はもうどこにも見えなかった。
藍川じゅん
元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中。