彼とのデートが、ちょっとマンネリ化してる。
ていうか…付き合いはじめて、もうすぐ2年だし…いわゆる倦怠期ってやつ?
デートと言っても…いつもホテルだし。
コンビニでビールとおつまみ買って、ホテル行って、テレビ見ながら飲み食いして…。
こんなのなかりじゃときめかないよ。
肝心なエッチの方も、ワンパターンていうか…。
すぐアソコを刺激して、わたしをイかせて。
挿入して、彼がイったら、おしまい。
ホテルを出て、どこかへ寄るわけもなく。
そのまま駅まで歩いて、バイバイ。
なんか…むなしいぞ…。
ドライブデートしたいとか、いっしょに映画に行きたいとか、もっと美味しいもの食べに行きたいとか、わたしにだってリクエストはある。
でも、エッチしかないカップルというのが現実だったりする。
なら、せめてエッチで盛り上がりたい。
彼を…開発したら楽しいかな?
乳首刺激したり…。
フェラしてるとき声を出してもらったり…。
だから…。
わたしは色々と試してみた。
ネットで調べたテクニックを駆使してみたり。
彼の乳首にキスして…甘噛みしたり。
指先でクネクネとこねたり。
フェラだって、雁首のところを重点的に刺激した。
おち●ちんの裏側というか…裏筋(?)の部分を刺激したよ。
先っぽをストローみたいに吸ったりしたし。
でもね…。
彼ったら全然感じてくれない。
不感症かよっ!
それで、つい言ってしまった。
「SM興味ある?」
そしたら彼が興味を示した。
「縄とかいいよね」
そうかそうか…彼ってSM嗜好だったのかぁ~。
わたしに挿入するのではなく、わたしに縛られたかったのかぁ~。
それなら…。
わたしのフェラじゃ、物足りなかったよね。
乳首責めだって…甘噛みじゃなくて、もっと歯を立ててあげたらよかったのかな?
彼の嗜好がわかると、なんだか彼が可愛く思えてきた。
「紐…Ama●onで買っておこうか?」
わたしは問いかける。
「色々あるし。調べて俺が買っとくよ」
そうかそうか…縄一つ選ぶにしても、こだわりがあるのね?
わたしと彼との付き合いが、もしかしたら変わってしまうかもしれない。
わたしはSMはしたことない。
そりゃ、元彼にタオルで手を縛られたり、目隠しされたことくらいはある。
でも、そんなの全然SMじゃないよね?
彼はどんな縄を持ってくるんだろう?
わたし…女王様になってしまうの?
彼がわたしのこと「●様~」なんて呼ぶようになるのかな?
そのうち鞭とか買って。
「この汚らしいブタめ!」
とか言って、おしおきするようになるのかな?
そんなコトを考えている間に、デートの日となった。
いつものように、新宿駅で待ち合わせ。
いつものように、コンビニでお酒とおつまみを買って。
いつもと同じホテルへいく。
サービスタイム3時間。
空いてる室で一番安いお部屋。
いつものように彼がお金を払い。
いつものようにROOMに入った。
「荒縄もいいんだけど、最初だし。痛くない方がいいと思ってさ」
部屋でお酒を飲みながらくつろいでいると、彼は鞄から袋を取り出し話し出した。
ついにSMの縄の登場だ。
わたしが全く縄の話題を出さなかったので、きっと彼は待ちきれなかったのだろう。
彼は嬉々として…。
赤い縄を取り出した。
明るく鮮やかな朱色。
1.5㎝ほどの縄が綺麗に束ねられている。
「さあ…服を脱いで…」
彼が熱っぽくささやく。
わたしは言われるがままに服を脱いだ。
おっぱいが肌寒さにキュンと勃ったような気がした。
ショーツに手をかけ、引き下ろす。
彼とは何度もエッチをしているけど、ショーツを脱ぐときは、なぜか背を向けてしまう。
シュル…シュル…。
縄のすべる音がする。
背を向けているわたしの首に縄が乗せられた。
縄は肩口から前へと垂れ下がり、おっぱいをくすぐる。
思ったよりも長い。足下に余った縄が束になっている。
「白い肌に赤い縄…とっても綺麗だよ」
珍しく彼がわたしをほめてくれた。
そっと頬にキス。
そして…。
赤い縄を、わたしの首元で結んだ。
「え? なんでわたしで縛るの?」
「なに言ってんだよ? SMしたいって言ってたじゃない?お前のこと縛るに決まってるじゃん」
え~なになに?
わたしが縛られる方なの?
そんなの無理。痛いのイヤだ。
鏡を見ると、デコルテの間に結び目がある。
おっぱいのあいだを赤い縄が、まっすぐに垂れている。
こんなのイヤなのに…。
わたしは赤い縄を綺麗だと感じていた。
つづく。
藍川じゅん
元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中。