官能小説~女子的夜話~

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【第69話】「レッスン2」

2016.9.15

「じゃあ、お願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

円山町のラブホテルの一室で、私たちはお互いに深々とお辞儀した。

河本君は、「なんだこれ」と笑った。

電気は消したほうがいいか、服は脱がせた方がいいか、風呂はどのタイミングで行きたいかなど、いちいち聞いてくれたが、私はラブホテル自体初めてで、何をどうしたらいいのかわからなかった。

「全部おまかせコースでお願いします」

「あ、かしこまりました」

部屋を薄暗くして、河本君が私の目の前に立つ。元彼以外の男性がこんなに近くにいるのは初めてなので、怖くてギュッと目を閉じる。

「沢田さん、今日はただの練習ですから。リラックスして下さい」

河本君の手が私の腰に回り、引き寄せられた。服越しに彼の体温が伝わる。

「とか言って、実は俺も今めちゃくちゃ緊張してるの、わかります?」

「そうなの?」

「当たり前ですよ、誘ってもらえて嬉しいのと、あとは、ご期待にそえないんじゃないかって不安で緊張してます」

「君でもそんなこと思うんだ」

「さっきから、人のことなんだと思ってるんですか」

ふふ、と笑った瞬間、彼の唇が降りてきて小さくキスされた。頬、目、おでこ、耳たぶ、首筋などに、唇が軽く触れていく。触れた場所が熱く気持ちよくて、体の力が抜けていく。

再び唇を重ねると、今度は舌が伸びてきた。河本君が誘導するとおりに舌を絡ませると、熱く湿っぽい息が漏れた。

「う…んんっ、ふ…」

温かくて大きな手が、腰からお尻にかけての曲線を撫で、もう片方の手が乳房を優しく包んだ。私は、いつのまにか河本君の背中に手を回し、しがみついていた。足腰に力が入らず、溺れてしまいそうだった。

「もっとよく見せてください」

河本君は、服の中にするりと手を伸ばすと、慣れた手つきでブラジャーのホックを外した。そして子供の着替えのように私をバンザイさせ、カットソーをするすると脱がせた。

私は自分で肩紐を下ろし、ブラジャーを床に静かに落とした。

「あっ、沢田さん、おっぱいすごい綺麗ですね」

「…ほんとに?」

「うん、張りがあって形がすごくいい。色も綺麗だ」

河本君は、陶芸品でも見るように、じっくりと私の乳房を眺めた。元彼には、そんなこと1度も言われたことがなかった。自信をつけさせるために社交辞令を言ってくれているだけかもしれないが、それでも素直に嬉しかった。

河本君の骨ばった長い指先が、乳房に触れる。それだけでビクンと体が震えた。大きな手で包み込むと、顔を近づけそっと乳首を口に含んだ。

「っふ…」

「沢田さん、声聞かせて

「でも」

乳輪ごとしゃぶりつくと、唾液を含ませ、ジュルジュルと音を立てて吸いついた

「い、やっ…音たてないで」

河本君は、私の反応を楽しむように、ますます下品な音を立てて私を煽った。その目は、私の顔をまっすぐ見据えている。

彼氏とのセックスは、ほぼ無音だったし、基本的に目も合わなかった。

音と絡み合う視線だけで、こんなにも激しく揺さぶられるなんて、知らなかった。

勃起した乳首を、急に指で摘まれ、思わず嬌声をあげた

「ふ…ああっ、んっ」

河本君は嬉しそうに顔を上げ、もう一度キスをした。

「その声、彼氏以外に聞かせたことないんでしょう? もっと大きな声で聞かせてください」

私は頭がぼんやりしてきて、河本君の言いなりになっていた。

(続)

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藍川じゅん

元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中。




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