官能的な愛撫……。
刹那的な空間……。
仕事を忘れお客さんの安藤(仮名)の前には、浅ましい雌の痴態のわたしがいた……。
心と身体が対峙し狼狽しながらも、わたしは安藤(仮名)しっとりとした背中に腕を回す……。
わたしは安藤(仮名)に腰を押しつけ、クリを執拗に攻めてと懇願する。
甘い囁き声は最高のスパイスとなり、安藤(仮名)のそびえ立つモノはそこが心臓になったんじゃないか?と思う程、脈が早くなる。
活きのいい魚のようにビクンビクンとのたうち回るこわばりは、亀頭から歓喜の涙をこぼしながら決壊寸前。
安藤(仮名)を見上げた。
安藤(仮名)もわたしを見据える。
互いに引き合うようキスをした。
わたしはそのまま竿を握りしめ、涎を垂らし、ディープキスを交わしながらしごいた。
「おおおー、イイ、イクッー」
甲高い声音と共に吐き出された官能の白いエキスは酷くわたしの手を汚した。
「あ、待って、蒲団に垂れちゃうよぅ」
わたしはイッテくれた事が嬉しくて、嬉々とした笑顔で安藤(仮名)の頬に軽くキスをした。
「あ、ごめん、俺のが先にイッちやったよ……。綾ちゃんまだイッテないよね?」
「いいの、わたしは。安藤さんがイッテくれて。嬉しいの、また呼んでよ」
また呼んでよ……。
本音だった。
本当にまた安藤(仮名)に会いたかったから。
「……。んー。実は俺明日九州に帰るんだよ。綾ちゃんがこっちの最後の女の子でよかったよ」
「そ、そう……」
なぜか悲壮感が襲った。
ただのお客さんなのに……。
安藤(仮名)は象の様にのそっと起き上がり、コンポの上にある眼鏡を掛けた。
傍らにある黒いジャージを羽織ってタバコに火をつける。
タバコを燻らす安藤(仮名)の後ろ姿は寂寥感が漂っていた。と同時に(え?これベッドを共にした安藤(仮名)だよね?って。)
あまりのギャップに驚きつつも、さっきのベッドのプレイを反芻し、わたしは少し湿ったバスタオルを巻き付けシャワールームに行った。
「ピピピピピー」
タイマーが絶妙のタイミングで鳴る。
わたしは焦りながらシャワーを浴びて服を着る。
まだ良く拭いてない身体にまとわりつくキャミソールが気持ち悪かった。
安藤(仮名)のいる部屋に戻ると、寝そべってまだタバコを燻らせていた。
「じゃ、行くね。ありがとうね」
「……。」
何も言わない。
でも、タバコを持っている指を上に上げ手を振った。
白い煙がゆらゆらと揺れていた。
(ありがとう。人は見た目じゃないね)
わたしは玄関を出て踵を返し、店長の待つ送迎車に乗り込んだ。
ニタニタしているわたしに店長は怪訝そうな顔をしながら
「あ、綾ちゃん、次も仕事入っているからね」
「はーい」
わたしはその実、機嫌が良かった。
だから次の仕事も頑張るぞーと言う気持ちになっていた。
何て単純明快なやつだ。
いつもなら業を煮やすのに。
店長は機嫌のいいわたしをバックミラー越しにチラッと見ると首を傾げた。
物語のような甘く忘れられない出会いもある。
このお仕事は夢を売る仕事。
嫌なこともあれば嬉しいこともある。
『セックスワーク』は不思議で尚且つやりがいのある仕事です。
この安藤(仮名)と知り合いプレイをしてから、デリヘルのお仕事の見方が変わりました。
出会って良かった人です。
でもねー。
身体を酷使するお仕事だからね。
安藤(仮名)のよう優しく扱ってくれる人は貴重なお客さんです。
では次回!! お客さんとの恋愛デス♡
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藤村綾
風俗歴15年。現役デリヘル嬢。風俗ライター。『俺の旅』ミリオン出版にて『風俗珍講座』連載中!日々炯眼な目で人間観察中。