「え?それって本気で感じてるぅ?」
デリヘルを呼んでくれたお客さんが語尾を上げ、口を開いた。
組み敷かれながら、あたしは、
「ああ、き、気持ちいぃ……」
目を半開きにしながら、媚びた声を天井に向け発する。
あたしは、猜疑心だらけのお客さんの質問には一切答えず、腰を浮かし、身体を震わせ、シーツを掴んだ。股のあわいに入り込んで、あたしの割れ目をなぞるお客さん。あたしは、全く目を開いてはいない。目を開けると現実が待っている。薄暗い部屋で行われる行為は、あたしであって、あたしではないのだ。
そう、風俗嬢『あや』なのだ。
デリヘルに来るお客さんの半分くらいは、
『風俗嬢(女の子)が感じてくれるのを見ると興奮するんだよね。
え?なんでって?うーん、征服感かな?』
なので、ぶっちゃけ、エッチなデリヘル嬢は指名を取れるのだ。
こーいっちゃーなんだけれど、あたしは、そのじつ、エッチです。(/。\)
デリヘルの仕事をしている時にだけ、エッチになるのではなくって、生粋にエッチです。最早、風俗・デリヘルは天職と自負しております。エッチでないと、できない仕事でもあり、逆にエッチでない方ができる場合もあり、まあ、ケースバイケースなのであります。
仕事が仕事なので、食傷気味になり、
「エッチなことは、大嫌い!」
「彼氏?いらないよ、エッチなことをプライベートまでしたくない」
風俗で働く女の子に多い台詞。うーん、わからなくもない。仕事なら。
などど、割り切って仕事をしているのは、若い女の子。
ある、お客さんが、
「ある、デリヘル嬢がさ、まー、これが、またエロくってね?」
と、口火を切り出し、あたしは、えー、どんな風に?首をかしげ、話を促した。
「趣味と実益の世界だよね。30歳の人妻さんだったよ。
お金には困っていないのだけれど、欲求不満の解消に働いているって」
えー!すごいね。で、どんな風にエロかったにの?また、先を促す。ふふふ。
話しに興じプレイ時間が刻一刻と過ぎてゆく。腹黒。
「まあ、感じまくって、濡れまくて。さ、あれは、演技じゃないね」
お客さんは、頷きながら、あのデリヘル嬢はエロかったよと、何度目かのエロかったを口にした。
「そこまで、エロいと、こっちも、本気になるよね。また、呼んじゃったもの」
お客さんは、そういいながら、淡白なあたしには、あまり満足しなかったようで、ものの、数分で射精を終わらせてしまった。
「趣味と実益ねー?」
あたしは、呟いた。
お金に困っていない風俗嬢は、自分の欲求に忠実なので、プレイが濃厚になり、指名が取れるのかなと。あまり、がっついていない風俗嬢の方がお客さん的には、よく見えるらしい。
がっついていない=エロいってことだ。
エロさを前面にだして、最大にサービスをし、自らが感じまくる。こんなデリヘル嬢だったら、まず売れますね。いちいち、律儀に仕事の度、感じてしまっていては、身体がもたないと思われますが、これもまた個人差。ローションをあそこに仕込ませないといけない嬢もいれば、自分の潤滑液だけで、事足りる嬢もいます。
うーん、あたしは……。後者?前者?ケースバイケースですかね。
けれど、やっぱり、基本的に多少なり、エロい方が仕事に向いていると思います?。あたしもエロいですし。ふふふ。この仕事では自分のエロさを否定するのではなく、むしろ肯定すべき。
風俗バイトは、自分で決めたこと。楽しくなくっちゃ、やっている意味がないから。ね。
次回は、『涙の訳』です。
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藤村綾
風俗歴15年。現役デリヘル嬢。風俗ライター。『俺の旅』ミリオン出版にて『風俗珍講座』連載中!日々炯眼な目で人間観察中。