「ほんとうにすごいとおもうよ。きたないおとこ、くさいおとこ、タイプではないおとこをあいてにするわけでしょ?」
まるで、デリヘル嬢を卑下する言い方にカチンとくるも、そう言った言葉には何の意図も非難もなくて、ただ、心底思ったことを口にしたのだろう。
お客さんとの話の流れでそんな話題になり、ええ、ああ、まあ、などと、口ごもりながら、あたしは肩を竦めた。
確かに、お客さんは選べないし、お客さんがワキガであろうと、デブであろうと、ハゲであろうと、依頼されホテルに出向き、部屋に入れば肝も座る。
お客さんが思っているほど、風俗嬢・デリヘル嬢はヤワではない。風俗嬢はそれこそ、いろいろなジャンルの男性を相手にしている訳であって、意外にも怯まないのだ。
けれど、風俗嬢だから、出来ると思う。普通の8時~17時のOLさんだったら、きっと出来ない。出来るはずはないのだ。お金が絡んでいるからとか、ではなく、風俗嬢は普通のOLさんの仕事の感覚で風俗の仕事をしているのだから。お金を貰っている以上仕事には変わりない。どんな仕事でも、嫌なことはたくさんあるし、悩んだり、泣いたりすることはある。風俗嬢も同じだ。
風俗嬢だからっていって、特別な好奇の目で見ないでほしい。あたしは、毎回頭の中で同じ言葉をリフレインさせる。
もちろんイヤな事ばかりではない。風俗嬢だからこその喜びもあるのだ。
例えばお客さんに、
「今日は本当によかった、あやちゃん、ありがとうね」
その言葉を聞いた時。
あたしは、ああ、この人に必要とされたんだな。ちょっとは、この人の癒しになったのかな。なんて思うと、よし、次もがんばるぞ。と、俄然やる気が出る。たまーに、全く会話もなく、呆気なく終わってしまうお客さんもそりゃーいる。けれど、最後射精をし終えた後は、会った時よりも、やや柔らかくなって、はにかみつつ、あ、ありがとうね、と囁きながら帰ってゆく。
デリヘルの仕事をして、何人もの男性があたしを通り過ぎていった。けれど、どの男性も、出すものは皆、同じ。白い白濁した液体と、高揚し、緊張した汗と、そして、鬱憤と、嘆きだ。欲望を吐き捨てる男性の声と、溜まったものすべてを受け入れる風俗嬢。風俗嬢だからこそ、出来る最高のサービスだと思う。
本当は、風俗に従事していることなど、恥じることもないし、むしろ、胸を張ってもいいくらいだと思う。けれど、今の社会では、どうやら、真っ当な仕事としては、認知はされてはいないのが、現実だ。そういうあたしも、風俗嬢をしていることはひた隠ししているのだから。ダミーで普通の仕事をしたりしているし。
けれど、あたしは、この仕事が好き。デリヘル嬢だからこそ、男性の気持ちを熟知していると思うし、聞き上手になった。多種多様な嗜好を持った方がいるなぁーと感心したり、全く恋愛経験もないお客さんがいたりと、人生の勉強になる。なんて、大袈裟なのかもしれないけれど、事実、他の女性よりも、男性を見る目は辛口だと思う。
なぁーんて、いっても、あたしは、まるで男運のないデリヘル嬢なのでありますぅー。
風俗嬢だからこそ、男性を見る目を養い、自分を磨き、女であることをいつまでも忘れずに、マナーを守って、綺麗でいる。
風俗嬢も普通のOLさんとおんなじなのです。
と、次回は、この流れに便乗し、『風俗嬢の恋愛事情』です。
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藤村綾
風俗歴15年。現役デリヘル嬢。風俗ライター。『俺の旅』ミリオン出版にて『風俗珍講座』連載中!日々炯眼な目で人間観察中。