現役デリヘル嬢のリアル体験~地獄でほっとけ~

現役デリヘル嬢のリアル体験 地獄でほっとけ!

【第45話】「セックスと風俗嬢」

2015.7.14

風俗の仕事していて、何人もお客さんがついたときに限って、

そういう、お客さんではないオトコと“したい”と思うときがある。

なんだろうか?「もう、いいじゃん。ざんざん触られて」という思考は回っているのだけど、身体はお客さんではない人を求めていたりする。

常に気を使う風俗の仕事に心が疲弊しているから、悲鳴を上げているから、抱きしめて欲しいだけか。

うーん。そうじゃない。本当にしたいのだ。

お金を介さない関係。風俗嬢は性行為の代償がお金である以上、それを超えるような人と出会うのは稀なこと。特別な存在である。

「ねえ…今日…」。女性から誘われて断る男はそういない。

その彼は、あたしの仕事がデリヘル嬢だとは知らない。知ったらショックだろうし軽蔑されるに決まっている。まだ知り合って間もないころ、彼とした後に言われたことが脳裏から消えない。

「フェラ、上手いよね」

彼は一体誰と比べたのだろうか。もし、あたしと同業のデリヘル嬢やほかの風俗嬢だったら、滑稽な話だ。「だってー、好きなんだもん。もっと気持ち良くなってよ」……。

彼とのこの時間だけは、自分が風俗嬢であるということを忘れられる。いくら酷使した下腹部に違和感があっても、そんなことどっかにいってしまうほど。

彼とのセックスはあたしにとっての精神安定剤だ。けれどデリヘルで身に付いてしまったオーバーな演技や過剰なサービスもしや風俗嬢じゃね?と思わせる振る舞い。

あ、いかんいかん。と思っても、仕事で身についてしまった行動ってのはそう簡単に直らないし、彼としては腑に落ちないことも多々あると思う。

彼は何も言わない。行為が終わって、乱れた呼吸で汗を流しながら、

「おいで」。汗でぐっちょりの胸にあたしは飛び込んでいく。

もしデリヘルのお客さんに汗なんて垂らされた日には、ムッとしてしまうほどなのに。

好きな人とのセックスは風俗嬢にとって、なくてはならないものだと思う。

「えー、お客さんがさ、気持ちよくしてくれるから彼氏とかいらないし」

デリヘルの送迎車で一緒になった女の子が言った。

あたしは首を傾げる。なんでお客さんにされて気持ちいいの? 肉体的にはそういうこともあるかもしれないけど、精神的にはどうなのだろうか? 本気で言っているのだろうか。聞けなかったけど、あたしは違う。

風俗のお客さんは、お客さん。こちらとてプロの風俗嬢。気持ちよくさせるのが仕事なので、自分の悦を得るなんてことはまったくない話だ。

「うそー、お客さんはお客さんでしょ?」

ケラケラと屈託なく笑っているこの子もデリヘル嬢だけど、その目に輝きはない。まあ、あるわけもないか。きっとそう思って割り切らないと、プライドを捨てないと、できない究極のサービス業だから。

風俗嬢は選り好みなく男性客の前で性を吐き出さないといけない。だからこそ、「彼」や「旦那さん」とのセックスを大事にして欲しいと切に望む次第でございます。

次回は『痛い!むかつくお客さん』です。

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藤村綾

風俗歴15年。現役デリヘル嬢。風俗ライター。『俺の旅』ミリオン出版にて『風俗珍講座』連載中!日々炯眼な目で人間観察中。




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