風俗嬢である自分が一般の男性に恋をしてしまったとき、風俗で働いていることを疎ましく感じるか。彼に言ったらどういう反応をするだろうか。難しい問題ですよね。
今回はそんな女の子のお話です。
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あたしは昼間、エステティシャンとして普通に働いている。今時のエステは男性客も多くて、その美意識の高さに驚く。特に多いのは、口の回りのヒゲの永久脱毛。あごや鼻の下が青くなるのが嫌なのだという。女性のようなつるつるたまご肌になりたいという願望を持った男性が増えているのは、お店にとってはプラスなことである。
三浦君もそんな男性客のひとりだ。20代のさわやかな男子。
え?なんで、こんな若くて肌も綺麗で色白なのにエステなんかに来るんだろう?と不思議だった。
「俺、こう見えて、濃いんですよね」
三浦君は初めてお店に来たとき、こう呟いた。
「濃い……、ですか?」
濃いと言われ「あっさり顔じゃん」と突っ込みを入れると、三浦君は「いやー、ヒゲなんですって!」と真剣に答えた。「顔があっさりなのにヒゲが濃くてギャップがあり過ぎるから」と付け足した。
「あー、そうなんですね。わかりました」と
あたしは脱毛に関する注意事項や料金等を説明し、週に1回の担当エステティシャンになった。
年齢が2つ下ということもあり、話も弾んだ。彼が来店するたびにあたしはだんだんと、彼に惹かれていった。先輩がお客さんだった人と最近婚約したこともあり、もしかしたらあたしも…なんてぼんやり考えていた。
でも…。
実はあたしは風俗嬢なのだ。昼間のエステはただの表向き。本当は風俗歴6年のベテランデリヘル嬢。借金返済のために始めたデリヘル。エステで働いている以上、自分自身もキレイでいるよう磨かなくてはならない。むしろお金が掛かってしまい、結果借金が残った。なので、正社員からパートにしてもらい、デリヘルをメインにダブルワークとなったわけだ。
6年も風俗業界にいると、いくら昼間仕事をしているからといっても感覚がずれてくる。考え方も性格も、男に対する態度もすれてしまっていて、30前なのにもうまともな恋愛や結婚はできないなと諦めていた。
デリヘルのお客さんなどは論外で、お金をくれる人としか見られない。男性と意識して見たことは今まで一度もない。「愛人にならないか」。「付き合ってよ」。「やらしてよ」。下らないやりとりは疲れるが、客に恋愛させるのが風俗嬢の仕事。そうして手に入れたお金はあたしにとっての生きる糧だった。
男はお金。初々しいころのあたしは一体どこに行ってしまったのだろうか。デリヘルで客の相手をするたびに思うことだった。あたしは冷めている。感情の欠落。
最低だ。自責の念がいつもあたしを蝕んでいた。
三浦君の最後の脱毛の日、話の流れから風俗の話題が出た。あたしはドキリとしたが、それでも冷静を装って三浦君の話に耳を傾けた。
「風俗行く男ってどう思います? 俺の友達、みんなほとんどデリヘル呼んでるんすよ」
「んー、どうかなぁ? 男だし別に普通じゃないのかな」
三浦君の目にはタオルが被せてあるのであたしの表情が見られることはない。きっと、色のない顔をしている。三浦君は続ける。
「俺は風俗とかマジありえないっす。お金で女をとか信じられない。なので誘われても1回も行ったことないです」
「そう」
あたしは聞いてみる。
「じゃあ、もし仮にね、付き合っている彼女がいてね、その彼女さんが実は風俗で働いていたらどうする?」
「別れます。でも、その前に付き合わねーし」
即答だった。
「そ、そうね。そうだよね……」
その後もいろんな話をしたが内容はよく覚えていない。
覚えているのは、会話が途切れたときに突然言われた「付き合ってください」。
告白だと気づくのに少し時間が掛かったが、さっきの「別れます。でも、その前に付き合わねーし」の言葉のあとでは、痛いだけだった。
もし、デリヘル嬢をしてなかったら即座に付き合いを承諾していたはずだ。
三浦君が好きだし、三浦君もあたしを好きと言った。
6年間デリヘルで働いてきたが、今、初めて自分が風俗嬢であることを心底疎んだ。
「ごめんなさい。あたし、今、仕事が大事だからお付き合いできないです」
ちょっと泣きそうになりながら、やんわりと断った。
三浦君はもっと純粋な子がお似合いだと思ったし、あたしはやっぱりデリヘルの仕事も辞めたくないから。
でも、自分にもまだ人を好きになる感情があったんだということを気付かせてくれた三浦君に感謝しつつ、目だけ隠れていて、レーザーで赤くなっている口の回りをさけて、そーっとキスをした。
「え?」
三浦君は頬を赤らめ、頭を掻いた。
★
風俗嬢でも自分を卑下することなく自由に恋愛をして欲しいと思いますね。彼もしくは、旦那にバレない様。
風俗嬢は立派な仕事だと思います。ただ長く続けているうちに恋愛感情を忘れがち。どのような場面においても、女であることは忘れないでくださいね♡
次回は、「キスしてもいい?」デス。
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藤村綾
風俗歴15年。現役デリヘル嬢。風俗ライター。『俺の旅』ミリオン出版にて『風俗珍講座』連載中!日々炯眼な目で人間観察中。
【第125話】最初はどの業種がいいの? その2
【第124話】最初はどの業種がいいの? その1
【第123話】風俗のバイトをしていて嬉しかったこと
【第122話】風俗嬢のストレス発散方法
【第121話】売れっ子の風俗嬢「まなちゃん」が実践していること
【第120話】風俗バイトの初心者講座・デリヘル編
【第119話】これから風俗の仕事につきたい未経験のあなたへ
【第118話】風俗バイトの他にも普通の仕事をするほうがいい
【第117話】性病についてのおさらいをしましょう
【第116話】よい風俗店の見極め方
【第115話】写真指名を増やすテクニック!
【第114話】見た目重視?それとも内面重視?
【第113話】40歳の壁
【第112話】プレイの時間配分について
【第111話】性病検査のススメ
【第110話】テクニックを磨け!
【第109話】お客さんに言われて、“はぁ?”と思ったこと
【第108話】風俗嬢の1日
【第107話】高齢者風俗嬢のお話
【第106話】彼(旦那)に風俗バイトがバレタとき!
【第105話】人気嬢とお茶引き嬢との接客の違い
【第104話】お客さんからの嫌なことのかわしかた
【第103話】風俗嬢でよかったこと
【第102話】稼げる嬢・稼げない嬢
【第101話】あたし、ぽっちゃりだけれど、風俗嬢として働けるの?
【第100話】風俗嬢だけじゃダメ!
【第99話】希望に合う(自分の希望する)風俗店を探すぞー!
【第98話】良いお店の選び方
【第97話】接客!あるあるぅ〜編
【第96話】風俗バイトおさらい編
【第95話】風俗嬢って普通なの?
【第94話】お客さんにゆわれた『は?』なこと
【第93話】お客さんに言われ凹んだこと
【第92話】自宅のお客さんの家に行くとき注意すること
【第91話】風俗嬢は顔?性格どっち?
【第90話】写メ日記・書いていいこと・悪いこと
【第89話】指名をとるこつ
【第88話】暑い季節の風俗の仕事
【第87話】デリヘル嬢・あるある
【第86話】病気になるまえに
【第85話】風俗嬢の可愛い所作の作り方
【第84話】風俗バイトで、『あーそれ聞かないで』って思うこと
【第83話】肌のあうひと
【第82話】風俗バイトで役立つ!マル秘テクニック講座
【第81話】「いやん、桜の季節のお客さん
【第80話】「あやの『SM専門風俗店』講座」
【第79話】「風俗バイト徹底比較!? 箱ヘルとデリヘルのメリットとデメリット」
【第78話】「風俗バイトに行きたくないときのモチベーションの上げ方」
【第77話】「デリヘル店のバイトスタッフあるある?」
【第76話】「風俗嬢あるある?」
【第75話】「常連さんとの接し方」
【第74話】「見せる身体」
【第73話】「セックス依存症と風俗嬢」
【第72話】風俗嬢になった理由(わけ)」
【第71話】「Mなお客さん」
【第70話】「生粋のM」
【第69話】「涙の訳」
【第68話】「風俗嬢ってぶっちゃけエッチなの」
【第67話】「風俗嬢って…欲求不満にならないでしょ?」
【第66話】「風俗嬢の恋愛事情」
【第65話】「風俗嬢だから、風俗嬢だからこそ。」
【第64話】「風俗嬢と介護は似ている」
【第63話】「オプションの不思議」
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【第60話】「冬の風俗のお仕事の苦難!」
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【第57話】「風俗に来るお客さんをその気?にさせる方法」
【第56話】「風俗のバイトでも、仕事と割りきってメアドは死守!」
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【第52話】「人気な風俗嬢のやっていること」
【第51話】「あやのお悩み相談室 デリヘル嬢編」
【第50話】「あやのお悩み相談室・お客さん編」
【第49話】「潮を吹かせるお客さん!?」
【第48話】「暑い!夏場の風俗嬢の苦難」
【第47話】「キスはダメ、これもダメ」
【第46話】「痛い!むかつくお客さん」
【第45話】「セックスと風俗嬢」
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【第42話】ありがとう、また
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【第33話】デリヘル嬢ってぽっちゃりさんが多いのはなんで?
【第32話】キター、花見シーズン到来。お客さんあるある~
【第31話】疑似恋愛の行く末
【第30話】オンナのコのオナニー事情
【第29話】風俗嬢になって良かったこと
【第28話】カラ恋?
【第27話】風俗お客さんあるあるぅ~
【第26話】風俗嬢の失恋のお話
【第25話】貪欲なオンナ、あやの場合
【第24話】キスの不思議
【第23話】仕事とプライベートの割り切り方
【第22話】たまーにいる!! 肌の合うお客さん
【第21話】フーゾク嬢の心の病
【第20話】フーゾク嬢の正直しんどい
【第19話】リアル人妻フーゾク嬢
【第18話】フーゾク嬢になった理由
【第17話】店長はオンナ好き?&わたしが彼の店で働く理由
【第16話】店長と寝たがるフーゾク嬢
【第15話】デリヘル店の電話番をしてみたよ!!のお話し。その2
【第14話】デリヘル店の電話番をしてみたよ!!のお話し。その1
【第13話】お客さんとの恋愛
【第12話】いろいろなお客さん 最終話
【第11話】いろいろなお客さんno4
【第10話】いろいろなお客さんno3
【第9話】いろいろなお客さんno2
【第8話】いろいろなお客さん
【第7話】待機場あるあるぅ?
【第6話】性の病気のお話
【第5話】風俗嬢の恋 3
【第4話】風俗嬢の恋 2
【第3話】風俗嬢の恋
【第2話】お客さんの求めるものって?
【第1話】はじめまして!綾と風俗