肌を突き刺すような日差し。蜃気楼のようなアスファルトを眺めながら、デリヘル嬢はエアコンでキンキン冷えた冷蔵庫のような送迎車に揺られ、お客さんの待つラブホに溶けないようにデリバリーされる。
デリヘルの送迎車の中は、
「やい!ここは北極か!」ていうほどエアコンが効いていて寒いので、あたし専用の毛布がある。
「はい、あやちゃん着いたよ。205の鈴木さんね。いってらっしゃいー」
「いってきますー」
ドアを開ける。うわーっ!暑いー!まるでサウナじゃん!と突っ込みながらも、キンキンに冷えていた車内から急に天然のサウナにきたものだから、一瞬、あーあったか~いと身体が勘違いする。
その心地よさは直ぐに不快に変わり、背中に汗が流れるのがわかる。うわーっ!今度は暑いー!独り言を言いながら、ホテルのフロントに向かいます。
「すみません、205の鈴木さんお願いします」
ふん、風俗用の偽名・鈴木さんね。さっきのお客さんは、佐藤でした(白目)。
「はい、チャイムを鳴らしてお入り下さい」
いつものセリフのフロント従業員。あたしは、エアコンの効いてないエレベーターにて、鈴木さん(偽名)のもとへ。
『ピンポン』。チャイムを鳴らし、「失礼しまーす」。
お仕事のときのいつもの間延びしたあいさつ。
冷気があたしの足元にスーッと纏わり付いた。
「あ、どうぞー、どうぞー」促され、ソファーに座っている鈴木さんの横に腰を降ろす。
ええ!これまた冷房で部屋がキンキン。汗で引っ付くキャミソールを、直ぐに脱ぎたかった。
「暑いねー」
「はい、暑いですぅ」いや本当はね寒いの。
「やい!ここは北極か!」言えやしない。机の上に置いてあるエアコンのリモコンに目を落とす。ええ!20度じゃん!それも、風量が、『強』になってるし。
鈴木さんときたら、ものすごい巨漢。この寒い部屋でも汗をかいている。
うーん。あたしは、唸る。
「シャワーしましょう、汗かいちゃったし、ねっ!」
先にシャワールームに行かせる。よし!その隙に、冷房の温度を25度にして、『弱』に変更をした。なんとか、堪えられる温度になり、あたしもシャワーに向かう。
温かいシャワーが心地よい。鈴木さんのチン○は小さかった。巨漢に巨根はいない。長年の風俗経験からそう思っていてほぼ間違いない。
「じゃあ、先に、上がってるからねー」汗をかいている鈴木さんは、暑い、暑い、と言いながら、先に出ていった。あたしは最早寒いんだか、暑いんだか、分からなくて、体温調整ができなくなっていた。
シャワーを浴びて、部屋に戻る。
「!!!」
えええ!寒い。ものすごい寒い。
先にシャワーを浴びた、鈴木さんが、『ピ』『ピ』と、かわいい音を上げてリモコンを触っていた。
眉間に皺が寄る。
「なんかさ、暑いと思ったらさ、弱になってたぁー」
「やい!温度をいじるな!」言えやしない。
超寒い中、ガタガタ震えながらのお仕事。ふと、鈴木さんの顔を見上げたら額に汗をかいている。
男性は女性よりも暑がり。体温も高い。高温動物。体感温度が違いすぎる。
なので、むしろ暑がって当然だろう。あたしは、タオルで額の汗を拭いてあげた。
「あ、ありがとうね」
清々しい顔で鈴木さんはシャワールームに消えていく。あたしは、その隙にまたエアコンの温度を3℃上げてみる。きっとまた鈴木さんは温度を下げるのだろう。
「あ、先に出ますねー」
うわーっ!始めは寒かったので、温かく感じ、生き返った感がハンパないけれど、少したつと、じわーっと汗が噴き出してくるのが分かる。
送迎車はまだ来ない。外は灼熱地獄。日陰でも汗が背中にタラタラと垂れてくる。
暑いなぁ。やっぱし。蜃気楼の向こうに送迎車が近づいてくる。
「お待たせー」
ドアを開けて車に乗る。ヒヤっと冷気が身体に纏わり付く。ふーっ。
暑さが吹っ飛んで生き返る感じ。でも、しばらくすると「さっむー」と口づさみながら、毛布を引っ被っているあたし。
夏場のデリヘル嬢は、毎日がこの繰り返しで必ず体調が悪くなります(白目)。
他の風俗店でも、やっぱりお店の中キンキンだから大変だよね。みんなどうしてるのかしら。
次回は、『潮を噴かせるお客さん』デス。
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藤村綾
風俗歴15年。現役デリヘル嬢。風俗ライター。『俺の旅』ミリオン出版にて『風俗珍講座』連載中!日々炯眼な目で人間観察中。