現役デリヘル嬢のリアル体験~地獄でほっとけ~

現役デリヘル嬢のリアル体験 地獄でほっとけ!

【第66話】「風俗嬢の恋愛事情」

2015.12.22

「風俗嬢は意外にも出会いがない。

風俗の仕事で出会う男性は出会いとはいえない。

まあ、出会いかもしれないけれど、それは、街ですれ違う感覚に似ている。 なぜなら、もう、会うことはないのだから。(指名をされれば別の話だけれど)

風俗嬢は一体どんな恋をしているのだろう?

恋愛感情が欠落する仕事な上に、男性を尊敬し、心底愛することができるのだろうか?

あたしが従事しているデリヘルの女の子に訊いてみた。

「ん?。正直、恋愛はめんどくさいし、男はいらないや」

「風俗の仕事をしていると、彼氏とか作りにくいよね」

あー、うん、うん。

「風俗嬢だとわかっていたら本気で好きになってくれないだろうし、そもそも出会いがないじゃん」

ああ、全く。おっしゃる通り。

案の定。思った通りの回答にあたしは、二の句を継いだ。

そんな矢先。飲み友達の男性(この人はあたしがデルヘル嬢だとは知らない)が、

「あやちゃん、離婚してさ、さみしいんだろ?」

頬を赤らめ、やや真剣な面持ちで訊いてきた。

「うん、まあ、そう、かなぁ?」言葉を濁しつつ、寂寥感を一応醸し出す。

そんな心配はいらねーな。ゲップがでるほど、咥えてるわー。言えやしない。

が、しかし、咥えることと、恋愛は全く別だし。

なんとなーく、話はそこで終わり、じゃねー、と、その日はあっさり別れた。

数日して、また、メールが。

紹介したい人と飲んでまーす」

まあ、行ってみるか。重い腰を上げ、いつもの居酒屋に向かう。

「はじめまして」紹介された、男性はあたしのタイプで正直ビックりした。

お客さんではない男性と喋るなんて、何日ぶりだろう?

ふと、不思議な感覚に苛まれる。

「まあ、飲んでよ」

「あ、あたし、車なので、ノンアルで」

仕事が入るかもしれないと思い、スマホを机の上に出しっぱなしではじめまして。と、言い合いながら、杯を交わした。

不思議だった。お客さんではない男性と出会って、飲んでいる(ノンアル)

「俺も離婚したクチでさ、さみしいわけ」

「あー、あたしも、一緒だ」

ケラケラと笑いながら、話は尽きることはなかった。新鮮だった。

《ちゃらんちゃらん》

スマホの着信があった。

目の前の彼が目で出なよ、と訴える。

あたしは、あ、すみません、席を立って、少し離れた場所で電話に出た。

やっぱり仕事だった。

元いた場所に戻ると、なぜか、話題がデリヘルにまつわることになっていて、あたしはぎょっとなった。

なぜなら、紹介された彼から発せられたコトバがキョーレツだったからだ。

「いくらさ、さみしくってもさ、風俗、デリヘルは使わないよ、え?デリヘル嬢?ダメ、ダメ、大嫌い!

手のひらを顔の前でひらひらさせながら、論外だね。と付け足す。

あたしは、顔をあげられなかった。

あなたの嫌いなデリヘル嬢がここにいますよ。

喉の直ぐそこまで出かかった言葉を飲み込む。

けれど、うまく飲み込むことができず、あたしは、思わず、

「あ、すみません、用事ができたので帰ります」

始終うつむきながら、小さく返すしかできなかった。

「ああ、そうなんだ。また、あえるかな?」

彼が優しい言葉を背中にかけてくれたけれど、あたしは、振り返らず、「さようなら」だけを言って、居酒屋を出た。

風俗嬢であるあたしは、もう、普通に人を好きになれないのでは?

風俗嬢の自分を、どこか嫌悪し卑下している自分が嫌いだ。

仕事だと、割り切っている。

けれど、世の中の男性が皆が皆、風俗を利用するとは、到底思えない。

彼のように、風俗界には全く立ち入らないタイプもいる。

始まりかけていた刹那の恋はたった一時間で終止符を打った。

仕事に行こう。あたしは、デリヘル嬢だ。

次回は、「欲求不満にならないでしょ?」デス。

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藤村綾

風俗歴15年。現役デリヘル嬢。風俗ライター。『俺の旅』ミリオン出版にて『風俗珍講座』連載中!日々炯眼な目で人間観察中。




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