「こういう仕事しているってことは性欲が強いの?オナニーは?するの?」
憤りを通り越してあたしは呆れながらも、
「アハハー、そうですね、あたしエッチなんですぅ~」なんて冗談混じりに言ってみたりする。
アホか。
そんなわけないじゃない。勘違いも甚だしいことこの上ない。
デリヘル嬢だからって性欲丸出しのスケベなオンナと思われるなんて滑稽。
むしろ、性欲はまったくない。
心も身体も裸になるこの仕事についてから仕事をすればするほど、
性欲は小さくなり存在感をなくしていった。
セックスが好きだからと言ってデリヘルとか店舗型ヘルスとかソープに従事するオンナはそういないと踏んでいる。
オンナはそんなに器用ではない。身体を酷使しお金を稼ぐことに対し、性欲なんて不必要なものなのだから。
心底愛してしまったオトコができた場合は、自責の念にかられ辞めていく。
だからあたしはずっとオトコをつくらないって決めていた。罪悪感を抱いてまでもこの仕事をしたくなかったからだ。
だけど、あたしもデリヘル嬢とはいえオンナであり、ほんのたまに、優しいお客さんにあたり、情にほだされることもある。
こんな時は決まって気分が落ちているときや、嫌なお客さんが連続で続いた時だ。
「どうしたの?何か嫌なことあった?」
落ちた雰囲気が顔に出ていたのか、その日3人目に付いたお客さん、多分偽名だけど、田中さんがあたしに訊いてきた。
「や、別になんでもないです。こちらこそすみません。気を使わせてしまって」
台本を読むような感じ。心ここにあらず…。
「だよねー。客商売だしね。疲れるよね、本音はさ」
うん。そう。
疲れるし、触られるのも虫酸(むしず)が走るくらいなの…なんて言えやしない。
あたしは少し気の許した田中さんの前でうっすら涙を浮かべた。本当に疲れていた。
連勤で休みもなく、寒さも相まって渇いていた。身も心も。
田中さんはベッドで腕枕をしてくれて、あたしを優しくなだめ、そしてひっそりと愛撫した。
「あ、だ、ダメですって。わたしがしますって」言うが先、田中さんはあたしの股の間に入り込んでいた。
あそこに舌を這わす。「ンッ…」淫らな声がだらしなく出てしまう。
腰が浮いた感じがした。
正直あそこを舐められることは滅多にないし、むしろ嫌いな方だった。
しつこく舐められると痛くなってくるからだ。
しかし、田中さんは舌先を器用に使って、優しく愛撫した。
背筋に電流が走り、わたしはイってしまった。
別にデリヘル嬢をイカすことなんてしなくてもいいのだし、お金を払っている以上自分だけの快楽を得ればいいだけなのに。
めずらしい人と思いつつも、こんな優しい人もいるんだなってまた泣きそうになった。
あたしの身体は感じないなんていう言葉は最早払拭されていて、めちゃくちゃに感じる身体になっていた。
知らないうちに、いや、気がつかなかっただけなのかもしれないけれど、いくらお客さんでも優しくされると濡れてくるということを痛烈に感じた日だった。
少なくともあたしはエッチなことが好きなのかもしれない。―あやの場合-
次回は「フーゾク嬢の失恋」です。
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藤村綾
風俗歴15年。現役デリヘル嬢。風俗ライター。『俺の旅』ミリオン出版にて『風俗珍講座』連載中!日々炯眼な目で人間観察中。