現役デリヘル嬢のリアル体験~地獄でほっとけ~

現役デリヘル嬢のリアル体験 地獄でほっとけ!

【第64話】「風俗嬢と介護は似ている」

2015.12.8

あたしのデリヘルの常連のお客さんに、脳梗塞を患い、左下半身が全く動かない方(50歳)がいる。

ホテルの駐車場で待ち合わせをし、「こんにちはー、お元気でしたかぁー」などど、いつもの常套句を吐き、一旦助手席に乗る。

で、

「じゃあ、この荷物と杖を持って、運転席側に回りますね」

助手席の下に置いてある鞄と杖を持ってドアを開けて、あたしだけ降りて運転席に回る。

「ガチャ」運転席を開けて、はい、と杖を渡し、あたしの肩につかまらせて杖を使って車のシートから立ち上がらせる

しかし、こんなにも、運転席から降りるのが困難なのに、よく乗ってくるな。

毎回そう思いつつも、胸にしまっておく。

さーて、ここからが、風俗嬢介護デリヘル編のはじまり。

歩行もままならないお客さんは、フロントから部屋に行くまでに10分くらい時間を要す。

やっとの思いで部屋に辿りつくも汗ダラダラ。挙句ワキガときたもんだ。

けれど、笑っておつかれさまと声をかけソファーに座らせる。

足のギブスは取れないのでそのまま。

部屋に入るときは、毎回濡らしたタオルで足の裏を拭く(靴とギブスが一緒になっているから)。

なので、危ないのもあるけれどシャワーを浴びることができない

本当は汗もかいているし、身体をしっかりと洗ってあげたい。

仕方がないので、濡らしたタオルを軽く絞って電子レンジで40秒。

蒸しタオルの出来上がり。温度を確認して身体を清拭。

脱ぎ着しやすいものを選んで来ているので、着替えは自分でできるよ。毎回言う。

しかし……。身体を拭いていると、涙が出そうになる。まだ50歳。

仕事も恋も、なにもかもを諦めた男の顔には、覇気が全くなく、ただ目をつぶって身体を拭かれる愉悦に浸っている。デリヘル嬢のあたしでも悲壮な目で見てしまう。

介護士さんだったらこんな弱い心では対応しないんだろうなと、わずかに思った。身体を拭いたり、愚痴を聞いてあげたり、まるで介護みたい

介護ってこんな感じかな。

だけど、介護士さんは過酷な割にお給料は安いと聞いたことがある。

介護の道からデリヘル・風俗嬢に転身する人が多いのも分かる気がする。

ヌクかヌカないかで稼ぎが違いすぎるもの。

上半身を拭き終えて下半身に移動する。

ああ、男だな。あたしは何気に目を逸らす。身体は不自由でも、悲しいかな勃起はするのだ。

「参ったよ。ここは元気なんだからさ

お客さんはちょっとだけ頬を赤らめつつ、羞恥心あらわに口を開いた。

勃起した先端からは、透明な液体が垂れている。

あたしは、首を横にふりながら鷹揚な口調で伝える。

「ここが元気なのはおとこの証拠です。死ぬまでおとこ、死ぬまでおんなです」

まるで自分にも言い聞かせている言葉には知らないうちに力を込めてしまっていた

あたしは、亀頭からゆっくりと愛おしく口の中におさめた。

「ううっ」お客さんの官能の声音が天井に届く。

全く動かない左足は本当に細い。

あたしは、ジュルジュルと棹を啜りあげながら、胸にこみ上げるものを嚥下するよう飲み込んだ。

目頭が熱い。もう少しで涙があふれそうになった

「ズーズー」鼻を啜った。

どうしたの? キョトンとしたお客さんが目だけであたしを見ている。

泣いちゃいけない。あたしはデリヘル嬢だ。

お客さんは「あ、イク」細やかに告げ、ひっそりとイッた。

その後も身体を丁寧に拭き、着替えさせ、もちろん、車まで付き添った。

介護ではないにしても、似ている所はある。

もっともっと、身体の不自由な人が気軽に利用できるデリヘルがあればいいにな。と思う。

介護の支援がいつかは、風俗業界とリンクしますように。そっと、思った。

次回は、『風俗嬢だから、風俗嬢だからこそ』デス。おたのしみにー。

コラムの更新情報を受け取る
受け取る 受け取り停止
メールアドレス:

藤村綾

風俗歴15年。現役デリヘル嬢。風俗ライター。『俺の旅』ミリオン出版にて『風俗珍講座』連載中!日々炯眼な目で人間観察中。




バックナンバー