精悍な体躯(せいかんなたいく)の巨体のお客さんの自宅に呼ばれたわたし。
寡黙な男との120分。さてさて。デリヘル嬢『綾』の行く末はいかに!!
ユニットバスのお風呂は狭くて巨漢の安藤(仮名)1人で占領していた。
わたしは幸い小さくて痩せているので、なんとか安藤(仮名)とシャワーを浴びることが出来た。
もう少し膨よかなら無理だったかも。
身体はデカいけどユニットバスは綺麗にしてありカビ1つもなかった。
肌が弱いのかボディーソープが敏感用のもの。
わたしはグリンスで洗うのをためらう。
顔を上げて安藤(仮名)に聞く。
「あのー、グリンスで洗ってもいいですか?」
安藤(仮名)はなんと眼鏡をしたままユニットバスに入っていて眼鏡が真白に曇っていた。
わたしは思わず吹き出してしまう。
「ハハハー、眼鏡外さないんですね?何も見えないじゃないですか?
ってグリンスで洗っても大丈夫?肌弱そうだけど……」
わたしは気を使いながら言葉を継いだ。
「眼鏡ないと何も見えないから……グリンスって?何?」
安藤(仮名)がゆったりとした口調で言う。
ってかどうせ曇っていて見えてないじゃん!!と言ってやろうかとも思ったけどやめた。グリンスの事も知らないみたい…?
あ、そうか!
もしかしてこの人デリヘル呼ぶのが初めてかも知れない!
ぼんやりとそんなことを考えつつ、少しだけグリンスを敏感肌用のソープに入れ泡立てた。
しかし巨漢。
お腹の肉がたっぷりと乗っかっていて肝心の逸物が中々現れない。お腹の肉を片手で持ち上げやっとこ出て来た逸物は、それはそれは可愛らしいキノコだった。
てかシメジ?
それをやんわりと包み込むように優しく洗う。だらりとした睾丸も揉みながら洗った。
「うう、くすぐったい」
安藤(仮名)が訊こえるか訊こえないかの声音を吐く。わたしも安藤(仮名)を見据え質問してみる。
「今までデリヘルとか呼んだことありますか?」
「……。初めてだよ……。」
やっぱり……。当たった。
このタイプはコミュニケーションをとるのが下手だから。
わたしにはわかった。
遊ばないし、結構引きこもりのオタクタイプだって。
曇った眼鏡越しに発した言葉は何となく照れくさそうだった。
シャワーで逸物の泡を流し、狭いので安藤(仮名)に先に出て貰った。
1人残されたユニットバスは、痩せっぽっちのわたしは結構に広く感じた。
敏感肌のボディーソープはいやに好い匂いがし、どこのメーカーかな?と手に取り調べながらラベルを見た。が全く知らないメーカーのもので結局分からずじまい。
知らない家で知らない男とシャワーをし、知らないメーカーのボディーソープ。
知らないことだらけのこの時間がいやに滑稽に思えた。
シャワーから出てわたしはフィギュアがたくさん並んでいる安藤(仮名)の寝室に行く。
黒いスプリングベッドの横にデカいコンポとゲームが多種置いてあり見入ってしまった。
夕刻の6時。まだ外は明るい。
確か9月だった。
遮光カーテンを『ガー』っと引いてとりあえず暗闇の空間は出来上がった。
か細く入ってくる夕焼けがやけにいやらしかった。
わたしはバスタオルを巻いたままベッドに寝かされ
安藤(仮名)は眼鏡を外しコンポの脇に『コトッ』と音を響かせて置く。
眼鏡を外した安藤(仮名)は意外につぶらな瞳で鼻も高く、薄い唇が意表を付いた。
安藤(仮名)の大きな掌がわたしの顔を撫ぜ眼を瞑らせる。
え?何?さっきの安藤(仮名)だよね?と言う位、真摯な行動にとろけてしまうと同時、温かい掌がわたしの頬を撫ぜた。
そして口の中に指を入れてきた。
わたしはそのギャップに驚き、いつの間にか安藤(仮名)のペースに呑み込まれてゆく。
わたしはあくまでもデリ嬢よ。
まず貴男を攻めたいの。
そんな懇願も虚しく、仰向けのまま抵抗する意志が薄れていく…わたし。
続きは次回!! 最終話
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藤村綾
風俗歴15年。現役デリヘル嬢。風俗ライター。『俺の旅』ミリオン出版にて『風俗珍講座』連載中!日々炯眼な目で人間観察中。